2010年4月24日土曜日

2010年2月5~15日インド旅行記 (3)

そういや(2)で書き忘れたけど、詐欺師に案内してもらった紅茶・スパイス屋の親父から学んだプチ情報。アッサム茶は牛乳を入れてOKだが、ダージリン茶に牛乳は合わないらしい。

さっき恐喝されたときのYouTube動画タイトルを何にしようか思索をめぐらせながらホテルに戻る。そうだ、「インド人に恐喝される日本人」にしよう。


(右奥のMini Yes Pleaseってのが泊まったホテル)

腹痛用の薬を飲み、純白とは言えないシーツにシミが付いたベッドに横たわる。先ほど録画したリクシャでの恐喝を動画で振り返る。自分のことながら、切り返しの図太さに何度も笑ってしまう。この動画が撮れただけで、このカメラと予備電池に費やした2万円弱は回収できたのではないか。そう思うくらい動画の出来には満足だ。

一時間休むと、ある程度気持ちも落ち着いてきた。

ホテルを出て、ピンクのポロシャツ男が勧めてくれたコンノート・プレイスに向かう。今まで起きたことをツイッターに投稿したいのだが、やはりネカフェの場所が分からないのでそこら辺のサイクル・リクシャ運転手に聞くと近くにあるというので連れていってもらうことにした。


(癒しを求めてコンノート・プレイスへ)

ドライバー「じゃ乗りな」
俺「いくらだ?」
ドライバー「むしろお前はいくら払いたい?(表情があからさまに俺を試してる)」
俺「どれくらい時間がかかるんだ?」
ドライバー「15分くらいだ」
俺「じゃ50ルピー」
ドライバー「分かった」

ドライバーは曲者っぽいが意外にあっさり価格交渉成立。

ドライバー「どこから来たんだ?」
俺「日本」
ドライバー「インドは好きか?」
俺「好きだ」

ドライバー「マリファナは好きか?」
俺「いやいや、好きじゃない。君は好きなの?」
ドライバー「うん」

よくありがちなことだが、目的地の前に、どうしてもショッピング・センターで止めさせてくれ、見るだけでいいからと言ってくる。要は、連れてきて買わせることで、店からコミッション(紹介料)を取るのよ。まあ仕方ないので了承。

会社で「イケメン詐欺師面」の異名を持つモデル風草食系モテ野郎(同期の鈴木君)から赤いネクタイを頼まれていたので、店員に聞く。すると、前回の南インド旅行でネクタイを買った店と同じネクタイだった。

俺「これがここに置いてある最高品質か?」
店員「そうだ」
俺「前回南インドの店ではもう一つ上のランクがあって、そっちの方がよかったぞ」
店員「どこの店だ?」
俺「いや、明確に場所とかは覚えてないんだけど」

赤系のネクタイを何種類か見せてもらったが、ヨウジ・ヤマモト、コム・デ・ギャルソン、ポール・スミスを日頃から愛用するほどの飛び抜けた感性を持つ私の心に響くデザインは一つもなく、しつこく「いくらなら買うんだ」と迫ってくる店員を丁重にふりほどき店を去る。

リクシャに戻る。またいろんな場所に俺を連れていこうとするので「いいから早くインターネット・カフェに行け」と強めに言ったら諦めてくれた。

降りる間際になって、

ドライバー「150ルピー。これはグッド・プライスだ」
俺「何?」
ドライバー「リクシャ代、150ルピーだ」
俺「ちょっと待てよ。お前、最初に50ルピーでOKと言っただろ? なんであのときOKと言ったんだよ?」
ドライバー「(苦笑)分かった。じゃあ60ルピー」
俺「・・・。分かったよ。ありがとな」
ドライバー「ネカフェはあの通りを渡ったあたりにあるよ」

その後2、3人のインド人に聞いてようやく場所が分かった。途中で、学生っぽいのが5、6人で旅行に来ていて記念撮影していたので、「写真撮ってあげようか?」と声をかけたが、俺を警戒したような顔で断られた。メイン・バザールなんかとはちょっと違うよそよそしい空気をこの地区には感じた。その分まともなんだけど。


(犬がぐったり)

で、待望のネカフェでツイッターを開き、旅行記を書く。ここで早速恐喝動画をYouTubeに上げられたら熱いと思って店員にも聞いてみたが、USBはつなげないみたい。

支払いを済ませてネカフェの店番に「この中で誰が一番可愛いと思う?」とモーニング娘。のジャケ写を見せるが、何か怪しい質問と勘違いしたのかあからさまに困惑し「分からない」の一点張り。ちょっと心が折れる。


(コンノート・プレイスのショッピング街)

コンノート・プレイスを適当に歩いてると、公園に着いたので入ってみる。New Delhi Municipal Council Central Parkという公園。メイン・バザールの喧噪とは別世界なのどかな場所で、そこら中の芝生にカップルが寝ころんでる。歩ける距離でここまで平和な場所があるとは・・・。半ば呆然としつつ、円形の施設をグルグル回る。



(さっきまでのイザコザはなんだったんだ・・・)

えり付きのシャツにベストをまとったインド人が声をかけてきた。近々日本にビジネスを拡大する紅茶会社に勤めているらしい。話を聞くと英語だけでなくヨーロッパ系の言語(スペイン語だったか)もできるとかで、かなりエリートっぽい。彼によるとこの公園は爆発事件があった関係で、数ヶ月前まで撮影(カメラ持ち込み)禁止だったらしい。通り過ぎるインド人が皆俺のことをジロジロ見てくるのを俺がちょっと気にすると、「気にする必要はないよ。彼らはただ外国人が珍しくて興味を持っているだけなんだ」と言ってくれた。別れ際にモーニング娘。の誰が可愛いかの調査に協力をお願いすると了承してくれ、"sweetだね"というコメントを添えて道重さゆみさんに投票してくれた。

しばらくぼーっとしたくて、円形の段になっててみんなが座っているところに腰掛ける。しかし数分すると、右にいるインド人が「今何時だ?」と聞いてくる。時間を教えると雑談に発展。


(ここら辺に座るとするか)

その人はダラムシャーラー(俺が後で行こうとしている場所)出身で、大学に通うためデリーに移ってきたらしい。今は大学は卒業したが、仕事をしているわけでもないという。モーニング娘。では光井愛佳さんが一番可愛いと思っているらしい。

そして話の流れ的に、彼が俺を地元のチャイ屋に連れていってくれるということになった。チャイとサモサみたいなスナックをごちそうしてくれた。すると途中で彼の友人が合流してきた。


(お腹の調子が悪く、食指は動かないのだが・・・)

色々聞かれた中で、今日はこれからどうするんだという話になったので、「モーティ・マハルに行って晩ご飯を食べたいと思っている。タンドリー・チキンが食べたいんだ」と言うと、「うちに来い。チキン・カレーを作るからそれで晩ご飯をごちそうするよ」ということになった。たまたま公園で隣に座っていただけなのだが、なぜかお宅にお邪魔して晩ご飯をごちそうしてもらうということにいつの間にかなってしまった。

もちろん、危ないんじゃないかという心配はあるよ。なにせ、数時間前に恐喝されたばっかりだからね。しかも「地球の歩き方」には、親切を装ったインド人にだまされたという話がこれでもかと掲載されてるんだ。

でも、彼らが悪い人には思えなかったし、こんな貴重な機会を逃すわけにはいかないと思って話に乗らせてもらうことにした。

ちなみにもう夕方だが、朝起きてから「一本満足シリアルバー」のチョコ味(好物)を一本しか食べていない。インドに来るといつもお腹の調子がおかしくなり、食欲が抑制されるのである。

最初に公園で一緒になった男と二人で市場に行って、トマト、たまねぎと鶏肉を調達。トマトとたまねぎは日本で売ってるのよりずっとちっちゃい。鶏肉屋は、入り口に生きた鶏がいて(そりゃ新鮮だわな)、中で陽気で軽くラリったおじさん二人が肉をさばいている。


(産地直送)


(ノリのいい方たち)

リクシャでお宅へ。日本でいうアパートみたいな作りの、3階建ての一番上だったかな。中にふくよかな女性(お姉さん?)がいて、あいさつする。

テレビ、スピーカー、ソファ、きれいな模様の絨毯を完備した、そこそこ裕福な感じの家だ。

女性が料理を作っている間、テレビでインド映画を見せてくれる。ヒンディ語なので一切分からない。コメディを流しながらダラムシャーラー出身の男がところどころ解説してくれるのだが、どうやら笑いのツボも日本とは違うようで、ポカンとしてしまう。

そうこうしているうちにチャイ屋で合流したダラムシャーラー男の友人や、その家の家族が合流し(仕事帰りかな?)俺を入れて6人になった。全員とあいさつ、握手。

本当は家族の写真を撮りたかったのだが、何やら宗教的な理由で写真はだめだとか。

インド人ご家族「どこに泊まってるんだ?」
俺「メイン・バザール」
インド人ご家族「(頭を横に振りながら)Oh my god......なんであんなところに・・・たしかに宿代は安いかもしれないが・・・」

これからの旅行計画を詳しく聞いてくるので、明日アムリトサルに行って、それからダラムシャーラーに行って、という構想を話すと、たくさんダメ出しをいただいた。

言われた主な助言は、

・ダラムシャーラーは今の時期まじで寒いし天気悪いぞ
・アムリトサルは黄金寺院以外大して見るものないぞ
・どうしてもアムリトサルやダラムシャーラーに行きたいなら、さらに帰りにリシュケシュにも寄るといいぞ
・今の季節は北(ダラムシャーラー等)よりも砂漠地帯なんかが最高だぞ

といった感じ。

でも、旅行前に所信表明したように、今回の旅行ではどうしても黄金寺院や印パ国境の儀式(アムリトサル)やヒマラヤとチベット料理(ダラムシャーラー)を見たい・体験したい。次インドに旅行する機会があるとも限らないし、自分の意思を大切にしたい。しかも第一、チケットを既に買ってある。

助言に感謝しつつ、丁重に「計画は曲げない」と言ったら、「まあ好きなようにすればいいさ」と言ってくれた。

俺「明日、電車でデリーからアムリトサルに行くのだが、まだシゲタ・トラベルから切符を受け取っておらず、電車の時間すら把握していない。かない早い時間の可能性もあるので、今日シゲタが閉まるまでには切符をゲトっておきたい。だからあまり遅くまではいられない」
インド人ご家族「何? 旅行会社から買ったのか? あいつら、駅に行けば普通に買えるものをとんでもない値段でふっかけてくるぞ。いくらだったんだ?」
俺「チケット代が750ルピーで、手数料が200ルピー」
インド人ご家族「まじかよ・・・。高杉だろ。払い戻しして自分で買えば?」
俺「いやあ、そうも行かないわけで・・・」

もう支払い済みという俺の事情は理解してくれて、雑談時間を終了して晩ご飯を出してくれた。

チキン・カレーと、サグ・カレーと、魚のアチャール(漬け物)と米。

俺の皿に米とチキン・カレーをよそってくれる。


(正真正銘のインド家庭料理)

日本人や観光客向けのアレンジ抜きの、文字通りのまさしくノー・ギミックのリアルな家庭料理なので、果たして自分が食べておいしいと思うのか少し心配。

おそるおそる手で米とカレーを混ぜ合わせ、ほおばる。

すると、これがこれが。めちゃうまい!
普段そんなに感情を表にしないクールでインテリな俺が「んー!!!」と叫んじゃったよ。
"VERY GOOD!!"と興奮気味に伝えると、みんな嬉しそうで、特に作ってくれたダラムシャーラー男のお姉さんの笑顔が印象的だったよ。

チキン・カレーはカレーというより、トマト中心の味付けで、そのままスパゲッティに絡めてもおいしそう。

サグ・カレーは冷製で、コクがある。これもまたうまい。

魚のアチャールは生臭さがあるが、初めて食べる味。

さて、そろそろ出ないと。シゲタ・トラベル、そろそろしまっちまうんじゃないか。

ちなみに物価の話になって、散髪が日本では安くて500ルピー(1000円)と言ったらかなり驚いてた。「インドだとひげ剃りとマッサージを入れて20ルピーだよ」と。俺が普段利用している美容室ではカットが6500円だということについては触れないでおいた。

デリーからアムリトサルへの電車は、早朝7:20の便ともっと遅い時間の便があるらしい。

何と、

インド人ご家族「もし遅い便だったら、明日朝9時にコンノート・プレイスのマクドナルドで待ってる。お別れのパーティをやろう。もし早朝の便だったらそのままアムリトサルに行ってくれ。最終日もしくはその前の日、デリーに戻ってきたときにまた午前9時~10時の間、マクドナルドで待ってるからそのときに会おう」

というありがたい提案までしてくれた。心から感謝。

「インド人は私のことをだまそうとしてくる人がたくさんいるけど、あなたたちみたいな素晴らしい人がいる。だから、私がインドが好きだ。ありがとう」とご家族全員の前であいさつし、家を出る。

ダラムシャーラー男がお宅を出てからリクシャ乗り場まで案内してくれて、メイン・バザールまで行ってもらえるリクシャ探しと料金交渉までやってくれた。

最初のリクシャ「100ルピー」
ダラムシャーラー男「ありえねえだろw」
次のリクシャ「80ルピー」
ダラムシャーラー男「だめ」
俺「(そこまで頑張ってくれなくてもいいのに・・・と内心)」
三台目のリクシャ「60ルピー」
ダラムシャーラー男「よっしゃ」

私が支払う数十ルピーを値切るためにわざわざ手間をかけてくれたことに感謝しつつ握手とハグを交わし、リクシャに乗り込む。

メイン・バザール入り口に到着。結局、私が持っていた一番細かいお金が100ルピー紙幣で、リクシャ運転手が「お釣りがない」ということで(本当かは分からないが、こういうことはよくある)、100ルピーを支払ったわけだが。

夜10時過ぎのメイン・バザールはかなりドープな雰囲気だが、案外変な客引きには引っかからない。

入り口の警察みたいな人にホテルまでの方向を聞き、若干の緊張感を味わいつつホテルに戻る。


夜10時頃のニュー・デリーを歩く Walking in New Delhi around 10 PM part 1-2


夜10時頃のニュー・デリーを歩く Walking in New Delhi around 10 PM part 2-2


にしてもだな。恐喝されるのと、家に招待されて無償でご飯をごちそうになるのを同じ日に経験するなんて、他じゃありえないんじゃないか。

やっぱり俺、インド好きかもしれない。(続く)