さて、劇場に入る前に、基本的な質問。そもそもナンタとはなんだ? パンフレット(日本語版)に説明してもらう。
1997年の初公演以来、客席の平均占有率110%という記録を打ち立ててきた "NANTA" はサムルノリのリズム(Korean Traditional Rhythm and Beat)を素材にドラマ化した作品として韓国初の Non-Verbal Performance (非言語劇)です。(COOKIN' NANTA 日本語パンフレット)
少々日本語が不自然なのはご愛嬌。では、具体的にはどういう内容なのだろうか。再び、パンフレットから。
韓国のサムルノリを西洋の演劇様式に取り入れたこの作品は、大型厨房を舞台にして4人の料理師が登場し、結婚披露宴のための料理を作る家庭で各種の厨房器具(なべ、フライパン、皿など)を持ってサムルノリを演奏するという内容で構成されています。(同前)ということだ。
料理長の誕生日
劇場に入る。収容人数は、まあざっと見て300人くらいだろうか。自分達の席は後方にあり、ほぼ真ん中だがやや左寄りの位置だ。
後ろの方の席なのが不満だが、Yによると、むしろこの方が都合がいいという。というのも、前の方に座っていると、ステージに上げられて劇に参加させられるらしいのだ。YやFが数百人の観客の前でリズムに合わせて体を揺らすだなんて、想像するだけで顔を覆いたくなる。
劇の開始(午後4時半)の前に、ステージに幕が出てきて、日・英・中・韓の4ヶ国語の文章が映し出された。内容は、客への挨拶や、簡単なあらすじの説明だ。小音量の軽快な背景音楽に乗せて、文が切り替わっていく。何回か、客にリズムに合わせて手を叩かせる場面もある。
要は、客の温度を上げておくための演出だろう。私が一番それを感じたのは、今日は料理長の誕生日だ、という意味の文が出てきたあたりである。単に誕生日だと指摘するにとどまらず、図々しくも、客に祝福の歌を歌えと言ってくるのだ。
そんなこと言われても、ねえ。私としては「はあ、そうなんですか・・・」と鈍い返事を返すのみである。急に歌えと言われても困惑する。よって、黙殺する。実際、殆どの人が歌っていない。観客の大半が日本人のため、そのような欧米的なノリにはついていけなかったからだと見た。