尊敬する思想家の一人、岡田斗司夫さんが慶應義塾大学の講義にゲストで登場されることをタイムラインで知った。「潜り込みたいくらいだ」と何気なくつぶやいたら、思いがけないことに岡田斗司夫さんご本人が「潜り込んだらいいんじゃないですか?」と返信してくださったのだ。
2011年5月19日。
私は会社を休み、出身校である慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に足を運んだ。
θ(シータ)館という数百人収容の大教室。学生の頃は一度も時間通りに出席したことがないかもしれない一限の講義を、最前列で、食い入るように聴き入った。岡田さんは講義の後も教室の外で学生との問答に対応してくださった。私は次の約束があったので問答の方は途中で抜けざるを得なかったが、30分くらいは参加することができた。
その講義と問答でとった7ページに渡るメモから、何点か特に印象に残った学びを挙げる。
- 何かの悪いところを直そうとすると、その反対にあるよいところを壊してしまう。世に無駄はない。よいものも悪いものも、残っているということは何かの必然性がある。
- 将来を「予測」「予想」しようとしてはいけない。「・・・はこうなる」というように末尾に「なる」が付くことはやっても無駄。「なる」は「する」に変換しないと無意味。「自分」が乗っからないとあらゆるアイデアは凡庸でつまらない。
- キーワード(「要するに・・・」「一言で言って・・・」)はどうでもいい。思考のプロセスに面白みがある。
- 現代は農業革命、産業革命に次ぐ情報革命の時代。ハイパー情報社会の本質は、一人が成功し数百万人が失業する社会。
- 日本の論争は「合理性(最大多数の最大幸福)」と「自由と権利」の綱引きになりがちだが、第三の視点として「美徳(好き/嫌い、嫌、気持ち悪い、どのようにありたいか等々)」も必要。実は世の大半の人々は「美徳(好き/嫌い、嫌、気持ち悪い、どのようにありたいか等々)」を元に物事を判断している。
- ビジネスの成功は偶然。成功法則はない。もしあるのなら、ダイアモンド社等の社員は皆金持ちになっているはず。でも成功本は個人が動く上では力になるから無意味ではない。J-POPの歌詞と同じ。
濃密で刺激的な学びに、脳が喜びの悲鳴をあげているような心地だった。こんな講義を受けられるだなんて、SFC生は何てぜいたくなんだろう。