2010年8月1日日曜日

とりあえず行ってみた香港・マカオ、その記録(3)(2004年7月17日執筆)

よく「歩いているだけで汗が噴き出てくる」という表現を聞くが、今俺が経験しているのがまさしくそれである。

いや、その表現だけでは不十分かもしれない。今、日本で7月16日にこれを書いている。俺は今日の昼間は何もしなくても汗をかいたが、それでも香港に比べると快適だった。何かが違う。おそらくそれは湿度だ。太陽光線に蒸されていると、顔も否応なしにしかめ気味になってしまう。

暑さの中に、爽やかさが微塵もない。暑いというより熱い。暑さというよりは「熱気」。


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ワタミ

駅へ

駅ビルを抜けて、駅へ向かう。

宿舎近くのコンビニがセブン・イレブンだったのは前に書いた通りだ。コンビニが日本資本なのは韓国でも体験済みだったので特に驚きはしなかったが、意外なところに見覚えのある店を見つけた。「ワタミ」だ。

日本でワタミというと、カネのない奴ら御用達の、敷居の低い、上品とは言えない、ファミレスのような感覚の居酒屋だ。だが、パンダ野郎によると、香港では、むしろ裕福な人々の支持を集めているという。

人の出入りが局地的に激しくなってきて、いかにも駅前という感じになってきた。もちろん駅前だった。人ごみをかき分けて(いや、別にかき分けてはいないか)駅内に入る。

まずは切符を買わなくてはいけない。韓国では値段が2種類で分かりやすかったが、ここはどういう料金体系なんだろうか。

それは今でも分からない。なぜなら、プリペイドカードを買ったからだ。パンダ野郎が、さすがと言うべきか予習をしていて、「オクトパス・カード」の存在を知っていたのだ。こういうところは偉い。

券売機の左側の、有人案内所で、パンダ野郎がガイドブックを係員に見せながら「カードをどこで買えるのか」と聞くようなジェスチャーを見せた。すると彼は「あ、オクトパス・カードね。1枚? 150ドルだよ」的反応を見せた。案内所というより販売所だったようだ。

無事、二人ともカードを獲得。150ドルだから、大体2200円分くらいか。


切符売り場


電車内

このカードは要するに、日本で言うスイカみたいなもんだ。仕組みも同じで、改札を通るときにセンサーに当てる。すると、手動改札を回せるようになる。手で回す方式は韓国と一緒だ。

「中心地っぽい所」で適当に歩く

電車に乗り込んでから、どこで降りるかを決めた。パンダ野郎の、「路線図の真ん中のあたりに行こう、中心地っぽいから」、という、文字にするとだいぶ安直な提案に、俺は疑うこともなく同意した。俺らは、尖沙口且(最後の「口」と「且」で一文字。漢字が出せなかった)というところで降りた。

特定の目的があってここに来たわけでもないので、駅を出ても進むべき方向はなく、したがって適当に歩くしかなかった。

やたらと、クラクションが鳴り響いている。俺は、クラクションの音を聞くと結構頭に来る質(たち)なので、あまり気分がよくない。

あちこちに漢字とアルファベットの看板。地元の店のもあれば、国際企業のもある。日本の精密機械メーカーのロゴをしょっちゅう見る。


街の人々のプライヴァシーは尊重しています


すっげーせり出してる看板(2010年8月1日追加画像)

特にデジカメを中心に扱ってる店だとそれは顕著だ。(そう言えば、前観たテレビ番組で、日本のメーカーのデジカメ世界シェアは9割だと言っていた。)中でもキヤノン。今年度から独身寮が廃止された、そして工場で朝の作業前に「やるぞー!!」と集団で叫んでいる姿が全国放送され一部の人々を引かせた、そして俺を筆記試験で落とした会社のデジカメ広告を、この旅行で何度見たことか!


何だったんだこの半球は(2010年8月1日追加画像)


香港にまで来てこんな光景を見るとは

本屋に行き当たったので、入る。読書が好きな俺にとって、本屋があると入店するのは条件反射に近い。

すると、日本語の本しか置いていなかった。入り口近くの方では、雑誌。中に入るとハードカバーの政治系の本、特に中国関連の本がたくさん置いてある。さらに置くに進んで数段階段を降りると、何と古本が町の小さな古本屋くらいの品揃えで置いてあるではないか。

最近俺が『BC!な話』というのを読んで面白かった竹内久美子の本も何冊かあった。近くで日本人の会社員が、携帯電話でビジネス関係の話をしている。

俺が本を見ている間(わざわざ香港に来て日本語の本を見ているのも妙な話だが)、本に興味を持たないパンダ野郎はトイレに行っていた。店に戻ってきたのでてっきり用を済ませたのかと思いきや、店員専用と書かれていて鍵がかかっており、使えなかったという。

これは香港で俺たちが困ったことの一つだった。公共(つまり誰でも使える)トイレを見つけるのに苦労するのだ。デパートのような大きな施設に入ると見つけることはできるが、それ以外の場所ではまず見つからない。地元の人たちは不便していないのだろうか? 素朴な疑問。

そんなことより何かを飲みたい。もうしつこいから暑いなんて言いたくないが、それでも暑いんだ本当に。こんなんじゃ観光もままならない。まずは水分を補給したい。

というわけでコンビニに入り、アイスクリームと「Lemon Green Tea」とかいうのを買ってみた。パンダ野郎も何かのアイスと飲料を購入した。「Lemon Green Tea」というのはまさにその名の通りで、茶・レモンの味に加えてちょっとメントールの風味が入ってて、冷たく清涼感がある。まあおいしいかって言われたら微妙だけどね。

モールへ

このまま意味もなく歩いているだけでは日差しがつらいだけなので、どこかに行きたい。特に室内。ガイドブックを見た結果、「海港城」という、様々な店が入ったモールへ赴くことにした。

12時あたりにそこに着いた。冷房で一気に汗が引く。生き返った気分だ。

街を歩いていると、よく店から冷風が吹いてくる。やり過ぎと思えるくらい冷たい。さすがに慣れているとは言え、現地の人々も暑いのは嫌なのだろう、冷房が一種の客引きになっている。

さて、そのモールだが、中はブランドショップばかりで、ほとんど俺たちの関心を引くような店はない。関心が仮にあったとしても、一番安いツアーで来て、かつ大金とは言えない金を所持している俺たちにそんなところで買い物を楽しむ余裕などない。

ただ、入れる店がなかったわけではない。一つはスーパーマーケット。色々な食材とか食品を眺めるのが単純に楽しかった。

もう一つは、(またもや)本屋。今度は洋書ばっかりだ。俺の目が輝く。英語で書かれた本は、最近はアマゾンのおかげで不自由なく買うことができるが、現物をぱらぱら立ち読みしながら物色する機会はほとんどない。新宿タイムズ・スクウェアの紀伊国屋に洋書のフロアがあるが、あそこは家から遠いし、高いしね。それに何といっても、品揃え。ここには紀伊国屋の洋書フロアの、軽く2、3倍の種類の本がある。


例の物語

政治学、経済学、社会学のあたりを中心に見てみた。古典から最近の本まで、バランスよく置いてあった。アイン・ランドの政治哲学について書かれた本が何種類もあったが、肝心のアイン・ランド自身の本を見つけることができなかった。アイン・ランドには前から興味があって、一冊は読んでおかなくてはいけないと思っている。最近、The Fountainhead という小説が『水源』という題で邦訳されたみたいだね(これ高すぎだろ・・・)。まあ俺は原書で読むけど。(それにしても最近思うが、読みたい本、読むべき本というのは無数にある。あり過ぎて手を付けるのにも戸惑うくらいだ。)

さて、俺らは何かを忘れていないだろうか。そう、お気付きの通り、今日、俺たちは起きてから(アイスを除けば)何も食べていないのだ。理由としては、まず起きた時間が遅かった。あと、色々と勝手が分からない。どこに店があって何を食えるかとか。そんなこんなで、既に昼時だ。

ご飯を食べられるありがたみ

このモールの中に、ご飯(米という意味ではなく)を出す店の集合体があることが分かった。これから改めて飯屋を探すほどのもちベーコンがないため、そのフード・コートで昼ご飯を食べることにした。

ピザ、寿司、うどん、カレー、アジア系の一皿料理、など色々な種類の食い物を出す店が、客が座る机と椅子を取り囲むように雑居している。日本食があるのは別として、こういうスタイルの飯場はニュージーランドのシナ系モールでのフード・コートを思い出した。日本だとたとえばダイエーとかに、何かフェイクっぽいラーメン屋とかたこ焼屋とかがあって、食べる場所は全店共通の場所があるじゃない。あんな感じ。分からない人は横浜駅西口のダイエーに行ってみてくれ。

ただ、問題は、どうやって注文するのかが分からない。時折、うどん屋から露骨に日本語で「~番でお待ちのお客様、お待たせいたしました」というアナウンスが聞こえてくるのだが、それに至るまでのプロセスが分からない。というのも、皆、店でお金を払っていないのだ。

しばらく客の行動を観察していると、どうやら、店で注文するとみんな、紙を受け取っていることに気付いた。そしてよく見ると中央に全店共通レジらしきものがある。そうか、店で注文して、紙を受け取って、それをレジに提示して払うのか!

後は、注文さえきちんとできれば問題ない。ここはぱっと見る限り、ビジネスで来ている英語国民や日本人、つまり外国人が多いので、たぶん言葉の融通は結構効くんじゃないかな。

とは言っても、結局は注文成功のハードルが見るからに低い、「A」「B」「C」の三種類のセットを出す店に決めた。一皿に、米、メインの肉、野菜、果物、飲み物が収まっている。俺は「C」にした。鶏肉ドリンクは数種類から選ぶようになっていたが、指を指せばいいようになっている。たしかハニー何とかというのを頼んだ。


ようやく飯にありつける・・・

支払いを済ませ、店の前で待っていると、店員の若い女性が「Excuse me」と言うのが聞こえた。振り返ると、俺らの料理ができていた。

ご飯を目の前にして座ると、何とも言えない安堵を感じた。こんな感覚は日本では味わえない。日本だったら、飯を食おうと思えば、金さえあればいつでも食える。だが海外だと、食べるまでのプロセスに悩まなくてはいけない。そんな経験をすることで、ご飯を食べられることのありがたみを感じたような気がする。

そのおかげか、おいしかった。俺が頼んだCセットは、何かをすり潰したソースがかけてある骨付きの鶏肉がメイン。パンダ野郎のメインの肉料理にはパイナップルが入っていた。俺はこういうのが好きじゃない。果物を食べる方法として間違ってる。ご飯はいわゆる「タイ米」みたいなもんで、ぱさぱさしていて少し独特のにおいがある。俺は結構普通に食べられるのだが、パンダ野郎はこれが苦手でたまらないようだ。半分くらい残していた。それが原因で、パンダ野郎としてはとっくに食い終わっているのに、係のおばさんになかなか回収されなかった。

フード・コートを出て、モール全体のまだ見ていないところをざっと回ってみる。が特にこれと言って面白い店はなかった。携帯電話の店があったが、俺が入ろうとしたら入り口をふさぐように立っていた警備係っぽい人に何かを言われた。俺は「あ、そうなんですか」という表情で引き返した。推察するに、おそらくまだ開店していないのだ。店内はスーツ姿の関係者っぽい人ばかりだった。

何箇所か、コンピュータが設置してあり、自由にインターネットをできる場所を見つけた。やってみるが、やたらと接続が遅い。日本語フォントは当然入っていないので、SFCのページに行ったら一部の漢字を除けば文字化けした。


SFCのページ

モールを出て、九竜公園に行った。動物公園というのがその中にあった。変な鳥がいて、でかさに驚かされた。間に檻(おり)がなくてあんなのが近くにいたら怖いって。

例によってやばい暑さなわけで、俺はちょっとへばってきた。ソフトクリーム限定マクドナルドが出店している。パンダ野郎が一つ買った。

公園にて

拡大(2010年8月1日追加画像)

香港島へ

公園を一回りして出た。次は、フェリーに乗って、向かい側の島に行くことにした。香港は若干の海をはさんで、シナ大陸側の土地(九龍[カオルーン]サイドもしくは半島と呼ばれている)と香港島に分かれているのだ。今いるのはシナ本土側。俺はこの時点でパンダ野郎に言われて知った。衝撃的な事実である。

3時少し前くらいに、フェリー乗り場の近くに着いた。日差しがもろに照りつけるところで、「石焼」状態になったコンクリートの座り場の上で仰向けになって熱さを楽しんでいると、呆れたパンダ野郎に何度もアホと言われた。彼にとっては俺を馬鹿にできる数少ないチャンスだ。


フェリー乗り場近くの建物


「凱旋門」と書いてある


何でも漢字にする人たちだ

「LOWER DECK」というサインの矢印の方向に行った。こっちは下、要するに船の中に入り込んで乗る席。船の上に乗っかるように座る席もあるんだが、下の方が安い。

電車みたいに改札がある。支払いはどうするのだろうか。何かのカードを使えるようだが、まさか電車と同じカードは使えないよな、と思っていたら、何と船でもオクトパス・カードが使えた。何て便利なんだ。日本だと鉄道の中ですらJRと私鉄でカードが違うのに。

もうそろそろきつい。今回は結構頑張って進めたかな。こんなことに何時間も費やすわりに、試験勉強やレポート作成を一切やっていないのがすごい。今季の俺の取得単位数は、今までで一番少なくなる。