2010年8月1日日曜日

とりあえず行ってみた香港・マカオ、その記録(1)(2004年7月2日執筆)

6月17日、衝動

集合時間が遅かったので、寝坊の心配はなかった。旅行会社から渡された紙には、成田空港に夕方の4時半集合と書いてある。飛行機が成田を発つのはその2時間後だそうだ。拍子抜けする。というのも、「うっかり遅れでもしたら・・・」という重圧を味わいながら、気を引き締めて早めに床に就く、という、旅行前にありがちな、修学旅行前夜の小学生的な心境に浸ろうにも浸れないからである。

気合の入らない集合時間だが、気合が入らないと言えば、この旅を決行するに至る経緯も適当だった。いや、適当じゃないな。そうじゃないけど、やたらあっさりしていた。

大体、行くことに決めたのが、一週間ちょっと前だ。それも、前から綿密に計画を練った形跡はない。

言い遅れた。俺は香港に行くんだ。もっとも、それは既にこのページのタイトルが明らかにしているのだが、それを言ったら元も子もない。

日程は、4泊5日。香港に行くついでに、マカオにも寄るつもりだ。で、それらの土地を訪れようと思った理由。俺は来年に就職することを決めてから、学生時代にふんだんに使える自由な時間の貴重さに改めて気付いた。暇な間に、色々な文章を読んで、色々な音楽を聴いて、色々な場所を訪れて、何というか、自分の感性を磨いて、世界を広げておきたい、と真面目に考えるようになった。香港(とマカオ)という、特定の場所を選んだのには、安くいけるから(4泊の宿泊代+飛行機代で4万円以下!)、そして香港は英語が通じそうだから、という浅いにもほどがある理由がある。

でも、どこに行くかは、あまり大事ではなかった。とにかく、何かがやりたかった。すぐにでも、どこかに行きたかった。俺を動かしたのは、その衝動だった。

下準備もほとんど何もしていないし、滞在先のことをよく知らないので、不安を持つ余裕さえなかった。ただ、一つ懸念を挙げるなら、それは男二人という組み合わせの濃さである。弁解させてもらうと、本当は4人で行きたかった。しかし、一人は就職が決まっていないため、そしてもう一人は大学院の試験が迫ってるため、来ることができなかった。そこで、仕方なく二人で行くことにした。(ただ、後で分かるのだが、男二人というのは、別に気色悪い組み合わせではなかった。)

このひっきーのぱんだやろうが!

しかし、今回の旅行の同行者、Fは、それなりにインターネットや本で下調べはしていたようだ。

心温まるエピソードがある。ネット上に、2ちゃんねるという掲示板があるようだ。そこの香港・マカオ旅行についてのスレッドで、Fが、質問をした。
140 名前:異邦人さん[sage] 投稿日:04/06/11(金) 23:20 ID:LR5QORpt
パンダホテルに泊まる予定なのですが、
パンダホテルの室内インターネット接続とは
ダイアルアップの事ですか?それともLANによるブロードバンド接続でしょうか。
もし経験者の方いらっしゃいましたら教えてください。
お願いします。

約2時間後のことである、誰かがこれに返信した。
141 名前:異邦人さん[] 投稿日:04/06/12(土) 01:09 ID:O8wzAbfz
>>140
ばーか!旅に出てインターネットだー、格好つけてんじゃねーど!
旅に出てそんなものに時間使ってんだったら旅の意味ねえーだろが!
おまいみたいなアホは旅に出る資格なし!!自分の部屋にとじこもってればえーんじゃい!
このひっきーのパンダやろうが!!

結局、141は、複数の人から「旅行というのは観光だけじゃなく出張の場合もあるんだよ(出張の場合はインターネットも必要だろ)」という指摘を受け、まともに相手にされなかった。たしかに痛々しい人格を持つ141だが、なかなか痛いところをついて来たのもたしかだ。なぜなら俺たちの旅行は紛れもない観光旅行だからである。そしてFがインターネット中毒気味なのも否定できない。

以降、Fのことをこの旅行記では「パンダ野郎」と呼ぶ。いいハンドルネームをもらってよかったな、Fよ。

空港へ

そのひっきーの、インターネット中毒の、ちゃねらーのパンダ野郎と、4時に成田空港駅で待ち合わせた。

俺の荷物は、ナップザック一つと、車輪付きのカバン一つ。後者の中に、肩から下げる小さなカバンを入れてある。車輪付き、6割くらいしか中身を入れていない。これは単純に、それしか入れるものがなかったからだが、結果的には、現地で買ったものを入れれば、帰りに余計な荷物を抱えなくて済む、という利点も生む。なんて賢い。

湘南台の有隣堂の、CD全品半額という神がかった閉店セールで購入した嶋野百恵のアルバム、"Girls Voice Studio 11"を聴きながら成田へ向かう。このアルバム、かなりいい。嶋野百恵は、俺が高校生の時かな、1stアルバムの"531"を聴いたことがあって、それもかなり好きだった。今回の旅行には、CDはもう一枚持ってきてある。Miss Mondayのアルバムだ。これも前述のセールで手に入れた。

4時に成田空港で待ち合わせる、予定ではあったが、そのちょっと前に合流した。京成船橋だったかな。たしか。そこから一本で、成田空港。

パンダ野郎は、俺よりもだいぶ荷物が少ない。さすが、一人で韓国に行くほどの旅行好き、手馴れているのだろう。だが、インターネット中毒者なだけあって、カバンの中には、しっかりとコンピュータが入っている。しかも、話によるとこの旅行のために、プロバイダと契約したり、道具を購入したりしたらしい。ネタとしか思えないような行動に出ている。

空港にて

4時11分、成田空港駅に着いた。俺は、電車の中で、ベルトを忘れたことに気付き(今履いているやつはベルト不要。持ってきているもう一着がベルトなしでは履けない)、旅行会社から指定された待ち合わせの場所に行くまでの売店でベルトを探したが、なかった。大好きなのに最近はほとんどコンビニで見ないメロン味の飲み物と、あとは適当に菓子とか、ボディソープとか(結局使わなかったが)を買ったり、トイレに行ったりして、移動していると、ちょうど4時半くらいに、指定の場所についた。

指定の場所ってのは、何ていうのかな、「ソウル見聞録 (1)」の一枚目の写真みたいなところで、旅行会社別に受付があって、荷物を預けて航空券を受け取るところ。そこでチケットをもらって、出発が6時半、6時までに搭乗してくれ、みたいなことを言われた。それまでは自由時間だ。

まず、本屋に立ち寄った。というのも、俺はまだガイドブックを買っていないのだ。パンダ野郎は既に2冊ほど所持している。いくつか見た結果、『香港―おもしろシティ復活! ワールド・カルチャーガイド』を購入することに決めた。観光地を列挙したタイプの本とは趣向が異なり、香港の文化について、読みやすく面白い文章を集めた本だ。この本には好感が持てる。既存の旅行本とは違う物を作ってやる、という作者たちの気概を感じるからだ。前書きにはこうある。
旅行ガイドブックはこのままでいいのだろうか――。そんな疑問を持つところから、私達はこの(中略)企画をスタートさせました。(中略)

観光スポットの案内やホテルリスト、ショッピング情報などを通り一遍に並べただけのガイドブックには、物足りなさを感じているリピーターも多いはずです。それに、こうした(中略)情報は、むしろ情報誌やインターネットなど(中略)の領分になってきているとも言えます。いま、書籍として求められているのは、単なる情報の羅列ではなく(中略)”読んで楽しい”ガイドブックではないでしょうか。

飯が食いたい。飛行機で機内食が出るのがネックだが、機内食なんて基本的に食えた代物じゃないし、小腹が空いているので、軽く食っておきたい。

ラーメンを食いたかったが、ラーメン屋は閉店中だった。だから、去年2月の南朝鮮旅行のときに行ったのと同じピザ屋に入った。俺はパターテ(ポテト)と何かのピザ、パンダ野郎は山の幸がどうのこうの、という感じのスパゲッティを頼んだ。パンダ野郎は、体重が気になっていて、ダイエットのために野菜が入っていそうな献立を頼んだという。

料理を待っている間、互いにデジカメを取り出して、それらの性能について話していると、店員がやたらこちらを気にしているような。パンダ野郎は、カメラが気になるのではないか、と言っているが、そう言えばここの店は、前来たときも、いつ呼ばれても客のところに行けるようにするためなのか、店員が立って常にこちらを見ていたような気がする。でも、気になるんだよな、あんまジロジロ見られると。シャイな俺としては。

ここの店の味は、去年確認済み。実際、ピザもスパゲッティも、おいしかった。ピザは、じゃがいもとハムが乗ったシンプルなものだが食が進んで食べ終わるまで飽きない。ソウル見聞録で書いた、「単純な組み合わせだが飽きの来ない味」という評をそのままリサイクルしよう。


パターテ

本を物色したり、飯を食ったり、適当にぶらついたりしていると、そろそろ搭乗ゲートに行こうか、という時間になった。なのでゲートに向かった。ちょうど人の列が飛行機内に入り始めているところだった。

機内

切符を見せ、機内へ。中に入る寸前に新聞が複数。中国の英語新聞を取る。

席は左端の窓際+通路側だった。寛大な俺はパンダ野郎に快く窓側席を譲った。

各座席ごとに、手のひらサイズくらいの画面のテレビがついていて、複数の(1ダースくらいだったかな?)チャネルから選んで番組を楽しめるようになっている。Discovery Channelというのを初めて観た。エミネムの歌の歌詞の中に一度この単語が出て来たことがあって、どんな番組なんだろうと気になっていた。観てみると、科学者みたいな人が象から精子を出して、実験室で何やら成分を調べていた。自然界をカガクする、みたいな番組っぽかった。

コメディーチャネルが俺としてはかなり楽しめた。最初は、ありがちなアメリカン・コメディー・ドラマだったが、途中からミスター・ビーンになった。後者は言葉なしで笑わせるスタイルだが、パンダ野郎は俺ほど受けていない。俺の脳みその、欧米享楽文化による毒され具合がパンダ野郎のそれより激しいのだろう。

スパゲッティが主食の機内食は、想像以上にまずかった。おなかが空いていないというのもあるが、味が薄いし、風味もないし。パンも硬い。バターも硬すぎる。写真を載せる気も失せる。ただ、デザートのケーキとお菓子はうまかった。あ、ちなみにキャセイ・パシフィックね、航空会社。

飛行機の中のアナウンスは、英語→シナ語→日本語という順で流れる。そのアナウンスでも告知されたが、香港と日本との時差は1時間である。香港に着いたら、時計の長針を360度逆回転させなければならない。

機長(?)が、到着時間が"25 minutes ahead of schedule"(予定より25分早い)になり、午後9時45分になりそうだ、とアナウンスした。現地の気温は29度らしい。いよいよ、香港上陸が近づいてきた。

到着間近、到着


これじゃ伝わんねえ。でも揺れてたシナ

到着間近。窓の外、「百万ドルの夜景」と言われる夜の街。たしかにきれいだ。完全に、人の手によって作ったきれいさだ。もう、電飾、電飾。ライト、電気。どれだけの電力が消費されているんだ。いや、数値を出されても分からないけど。

近未来を描いた映画に出てくるような、人工的な都市に見える。

予定より早く着いた、はずだが、着いてから待たされた。というのも、俺らの飛行機が到着する場所に別の飛行機が居座っていて、それがどくまで待たなくてはいけなかった。

飛行機を出て、お約束の手続き(パスポート見せ)のためにお約束の列に並ぶ。そしてお約束の、ベルトコンベイヤーでの荷物受け取り。まだこの段階では、「香港」をこの目で見ていないため、異国に来たという実感が沸かない。


着いた。という感じがしない

突破。旅行会社の人と待ち合わせだ。指定場所に行くと、向こうがよく気付くな、というくらいの勘のよさで気付いた。中国人のおじさん。手に持った紙で、俺らの名前を確認する。そして、やたらと念を押すような詰問調で、「(今回のツアーには)観光なし、OK? 勘違いしたら大変なことになる」「帰りの日にちはいつ?」「帰りの飛行機の便名は?」などと、聞いてくる。

同じツアーで申し込んだ人が、10数人くらいかな、いて、彼らも同じように詰問されていた。俺らと同じくらいの年齢の男2人組や、女2人組もいた。逆に、3人とか4人は少数派な印象。

全員が揃うと、空港から出る。ムッとする外気。これはやばい。ツアー(と言っても観光はないわけだが)参加の日本人たちが一斉に「うわぁ」「暑い」と声を挙げる。

数分歩き、バスに乗る。これでホテルまで行くのだ。

もっと書きたいのだが、今日はこれくらいにしといてやるぜ。もう3時半過ぎてて、明日、授業があるんでね。さすがにこれ以上は書けねえよ。ひとまずこれで(1)として上げる。ちょっと旅行から時期空いちゃったな。今回のは旅行が長いから、サクサク書いていかないと、記憶の限界もあるし、完成しないな。