2010年8月2日月曜日

ソウル見聞録 (4)(2003年3月25日執筆)

CoEX Mall

次に向かうのは「CoEX Mall」という、様々な店が入った高層ビル(skyscraper)だ。様々な店舗に加え、映画館なども入っているという。ここに来るのは昨日の夜から決めていた。ガイドブックで見て興味を持ったからである。

明洞から20分くらいだろうか、乙支路3街(ウルチサムガ)駅を経由して、三成駅に到着。電車を出て地上へと進んでいると、ソニーのデジカメ、「Cybershot」の宣伝広告が、壁の至る所に貼ってある。それ以外の広告はないと言っていいほどのサイバーショット尽くしだ。

駅を出た瞬間から人通りが多い。実際、駅前には店が建ち並んでいる。そして、100メートルほど先には、探すまでもなく、目的地とおぼしき巨大な近代的建築物が見えている。

その手前に2002年ワールドカップのグッズ店があるので、まずはそこに入る。公式グッズが色々と置いてある。しかし、私が欲しかったユニフォーム類は全くない。アン・ジョン・ファンの人形が興味を惹くが、本人とあまり似ていないのが問題だ。結局、3人とも何も購入せず。

回転式ドアを回し、CoEX Mall の中へ。さあ、早速店へ――という時、出鼻をくじくかのように、さっきから疲れた疲れたと漏らしていたYが休みを要求する。ちょうど入ってすぐのところにベンチがあるので、しばしそこに腰掛ける。確かに、私も少し歩き疲れてきた。コンビニで買っておいた「Green Plum Beverage」という、梅ジュース風の飲料で喉を潤す。

また本屋に挑戦

休憩を終え、中を探索する。大型書店を発見。どうせ中に入っても何が何だか分からないのは分かっていることだが、懲りずに入ることに。3人のうちYと私は読書好きなので、どうしても本屋が気になってしまうのだ。

店内を3, 4分歩くと、我々はいつもの結論に達した。何も分からない。以上。悔しさを噛み締め、入った方向の逆側から店を出た。出る直前、私は周囲に注意を配っていなかった少女とぶつかった。向こうは申し訳なさそうに謝罪の言葉らしきものをかけてきた。私も「すみません」と言っておいた。日本語で。



(CoEX Mall 内のファストフード店)

ゲームセンター

ゲームセンターに入る。ヴァーチャ・ストライカー3の対戦台がある。値段は300ウォンである。向こう側では韓国人女性(推定24)がオーストリアを使って遊んでいる。私はサウジアラビアで乱入し、見事勝利を収めた。操作感が日本での同ゲームとやや異なると思ったのは単なる錯覚だろうか? そうかも知れない。

ゲーセンは日本と似ている。というより、大半のゲームは同じだ。先ほどのサッカーゲームだけでなく、ダンス・ダンス・レヴォルーションなど、日本で見たことがあるゲームをかなり目にした。ジャパニーズで説明が出てくるものも多い。

映画館とゲーム店

映画館は入場を希望する若者たちでごったがえしている。上の階から一望すると、まさに人の海である。あの中に入ったら映画を見る意欲を喪失しそうだ。

映画館の脇にはいくつかゲーム系の店がある。入口に「Play Station 2」と書かれた店に入る。途中までは日本にあるようなゲームショップだが、奥には電脳が配備されており、人々がネットゲームに興じている。

結論としては、この施設(CoEx Mall)は期待外れだった。敷地が広く、様々な店が入っているが、歩きつかれた割に、とりたてて興味を惹く店や商品には出会わなかった。実際、私達はゲームセンター以外で消費活動を行わなかった。わざわざ海外から来て訪れるほどの場所ではない。

少しの失望感と疲れを抱きながら、ホテルのある江辺駅に戻る。疲れたので、一旦部屋で休みたい。晩ご飯は宿舎近くの焼肉屋に入ることにした。



(ホテル窓から)

江辺駅に到着。コンビニでスポーツ新聞と菓子を購入してからホテルへ。

ちなみに、レシートを見たYが気付いたのだが、こちらのコンビニでは袋を付けると料金に20ウォン追加されている。環境への配慮ということだろう。そう言えばペットボトルのふたも簡単には取れないようになっていたのもその一環か。

Fはシャワーを浴びる。しばしブラウン管を鑑賞してから、18時40分くらいに、3人は再び部屋を出た。

牛の焼肉

今夜は、宿舎のすぐ向かい側にある、「PC」という看板の下の焼肉屋に入ることにした。今度こそ、牛肉の焼肉だ。そう言えば、ホテルに向かう初日の車中で、ガイドの朴さんがここを薦めていたのをおぼろげに覚えている。

入ると、奥の4人用の個室(とは言っても入口は開放されている)に案内された。手渡されたメニューを見ると日本語で書いてある。骨付きカルビを3つと、あと何なのか分からないがYの推挙で「チヂミ」というのを注文。

初日の店と同じように、先にタレやつけ合わせが来た。ここでも、タレは赤味噌風のと油っぽいものの2種類。これが定番なのかも知れない。肉を巻く葉っぱの種類は一つしかなく、量においても、昨日と比べると控えめである。(とは言っても、葉っぱや付け合せは、なくなるとすぐに店員が付け足してくれるので量はあまり関係ない。)

骨付きカルビは大体、13センチ×25センチ程の大きさ。「骨付き」の「骨」の部分が20%くらいを占めている。店員さんはまずそれをハサミで切り落とす。肉が焼けてくると引っくり返し、慣れた手つきで、肉を食べやすい大きさに切り分けてくれた。



(骨付きカルビとチヂミ)

ここのカルビは、とてもこってりとしている。やや脂っこいと言ってもいいくらいだ。もちろん、そんじょそこらの脂身の脂とは次元が違うわけだが、こればかり食べていると少々しつこさを感じざるを得ない。もちろん美味しいし、とても上等なカルビなのだろうが(評価:7)。

チヂミというのはお好み焼きのようなものだった。ただ日本のお好み焼きよりは薄く、よりサクッとした食感がある。生地に入っているのは緑の野菜とイカ。

食事を終えてからの反省点としては、「骨付きカルビを3つではなく、別々の種類の肉を3種類頼めばよかった」ということである。何故なら、テーブルで頼んだ肉が、「テーブル全体の」注文となる。つまり網の上では肉は一緒くたになってしまうわけで、ここからここは誰の肉、というように分けることは出来ない。肉は1種類よりは複数あった方が、色々な味が楽しめて飽きが来ない。次に焼肉を食べるときにはこの教訓を生かし、3種類の肉を注文することにしよう。

陰謀論

ところで、今夜の晩ご飯の値段は、昨日の晩ご飯のそれの2倍以上だった。記憶が確かならカルビが一人前で18000ウォン。これ自体は法外な値段ではない。だが、昨日は肉+ご飯で8000ウォンだった。そのすぐ近くの店で、値段が倍以上とはどういうことなのか?

Fは、「我々が渡された日本語のメニューにおいては、現地の人間が払うよりも値段設定が高くなっている」という、陰謀論(conspiracy theory)的仮説を打ち立てた。

だが、豚肉と牛肉という違いを考えると、この値段差もおかしくないのかも知れない。Yも、当初はこの仮説を支持していたが、後から「確かにあの値段も分かる」と態度を軟化させた。

街を散策

お金を払い、店を出る。このままホテルに帰るのも何となくつまらないので、周囲の街をぶらついてみることにした。

街は派手な電光を放っている。中でも、ショッピングモール風の巨大な建物が目立っている。日本で言うダイエーのような総合商店かとも思ったが、近づいてみてみると、外壁に「TECHNO MART」と書いてある。どうやら電化製品の店のようだ。言ってみればヨドバシカメラのようなものか?

残念ながら、それは確認することはできなかった。というのも、もうすぐで閉店となってしまうようで、大半の店が店じまいを始めているか、店員がいない。少なくとも、営業している雰囲気は全くない。時計を見ると20時直前だ。


(2010年8月2日追加画像)

店の閉店時間は20時が一つの相場のようで、歩いていても閉まっている店が多い。数少ない開いている店の中から、Yが「DVD」の看板を掲げている店にやたら入りたがる(何を期待しているのか、私には皆目見当がつかないのだが)。

Fと私は、嫌々ながらもYの熱意に押されて、ビルの2階にあるその店に入ってみた。入ると店員が「アニョハセヨ」と挨拶してくる。しかし中は敷地が狭く、商品数もごく限られている。別に見るべきところはないので数分で出る。出る時にもていねいに「アニョハセヨ」と言われた。

そう言えば、コンビにでも入るときと出るときに「アニョハセヨ」と言われた。この国に来る前には、「アニョハセヨ」は「こんにちは」だとばかり思っていた。だが、実際にはもっと汎用性のあるあいさつの言葉のようだ。「韓国語は3秒で話せ!」にも、一日中使える言葉だと書いてあった。

通りがかった八百屋では、みかんが10個で1000ウォンという、笑いたくなるような破格の価格で売られている。

階段があり、降りると地下街のような場所に着いた。地上では多くの店が閉まっており、人通りも減りつつあったようだがが、こっちはより人が多く、活気がある。

FとYがジェラート屋でコーン付きの氷菓子を購入。私達は、だいぶ注文のコツがつかめてきた。外来語の発声は日本語と変わらないので、外来語のメニューを頼めば通じる可能性が高い。その私の助言に従い、2人は外来語の味を頼んだ。そしてコーンかカップか、というのは指を指せば通じる。

謎の菓子

地上に再浮上。ホテルに戻るわけだが、その途中、得体の知れないおじさんが、得体の知れない袋詰の菓子を売っている。値段を見てみると1000ウォンと安いので、好奇心から買ってみることにした。

私は、比較的、得体の知れた菓子を手に取り、1000ウォン札で支払おうとしたが、おじさんは激しく手を振り、何やら言ってくる。が、全く理解できない。必死に聞き取ろうとしてもほとんど意味を為さない。

状況とおじさんの表情、仕草から判断するに、それは1000ウォンではない、と言っているのだろうと推測。差し出したその菓子を戻し、「1000」と書かれた札の付近の菓子を物色する仕草を見せてみると、おじさんは「そうだそうだ」という感じの身振りを見せた。

1000ウォンとおぼしき菓子を適当に選び、それを差し出すと、おじさんは、「そう、そう、それでいいんだ」という感じで、満足気に頷き、「オーケイ」と言った。何とか買い物に成功した。

ホテルへと向かう道すがら、私はあのおじさんが何と言っていたのか、考え続けた。「イ・チョン・ノン! イ・チョン・ノン!」と聞こえた。何度も自分でつぶやいてみる。するとある考えが浮かんだ。もしかして「イ=1、チョン=1000、ノン=No」、つまり「1000ウォンじゃない」ということか?

例の「3秒で話せ!」を開いて確認してみると、「1」は「イル」。だから、たぶん「イル・チョン・ノン」と言っていたんだろう。たぶんね。


ホテルに戻って早速食べてみると、ものすごく微妙な味。塩味というわけでもなく、甘いというわけでもない。そして、なぜか後味がほんのりと苦い。「ハトの餌なんじゃない?」とF。「Kの土産にするか?」と私。

口直しに、初日にコンビニで買っていた「高麗人参ガム」を食べみることにした。だが、口直しにはならなかった。驚かされるのが、その強烈な香り。とても食欲をそそるような香りではない。というよりお菓子の発する匂いではない。とは言え、実際噛んでみると味は何の変哲もない。甘いがそれ以上の特徴はない。

テレビを付ける。昨日は聞きなれない異国語に圧倒され気味だったが、2日目ともなると、だいぶ朝鮮語にも慣れてきた。違和感は減ってきた。少しはこの国に慣れてきたかもしれない。(2日目、終了)(続く)

(2003年3月25日、午前3時40分)


(道端で買った謎の菓子)